交錯する1日

先週の金曜日のこと。
めずらしく、朝から夜中まで動き回ったので、メモ程度に書き記し。

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まず、最近ずっと考えていた「専門的な仕事」への一歩として、先輩編集者の紹介で湯島にあるとある出版社へ営業に。
前日は知り合いのカメラマンさんと飲んでいて、しかも自分が思っていた以上に酔っぱらい、それをこらえるように深夜までブックをつくっていたので、かなりヘロヘロ状態での営業…となってしまったのだが、行き先は湯島。10代のときから十数年、年末になると必ず手伝っていた和菓子屋さんの鏡餅づくりのバイトでよく配達に行っていた地域で、その関係でいつの間にかゆかり深くなってしまった文筆の神様・湯島天神がいるところだったりする…というだけの後押しで、とにかく営業に集中してみる。

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その後、午後イチからの打ち合わせまで時間を潰すため、上野アメ横の純喫茶へ。
あまり人気が少ない店内のなか、娘の素行の悪さについてキレギレに愚痴をぶちまける主婦同士の話に耳を傾け、新しい男ができて、でも借金を抱えてそうで怖い…という内容を口にしつつ、それでも表情がほころんでいる60代前後のおばさんを目にしたところで、なんだか急にお腹が痛くなって、トイレでしっかり気分を整えて、店を出る。
店の並びに立っていたピンサロの呼び込みが、陽の光に目を細めながら声をかけてくる様が妙にさわやかに見えてしまう。奇妙な場末の倦怠感。

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相方のライターさんとの話では、大学関係の原稿の記事の構成をどうするか、という話だったけれど、数分でその話はきれいにまとまり、あとは「今年どうする?」という内容に。そこで、「細かい記事を書いて経験値をためるよりも、アルバイトをしたほうが面白そう。特に、自分の『仕事』のヒントになるような」という話を聞く。彼は介護系のバイトをするということだったが、一方僕が思いついたのは、兄から以前聞いた「孤独死した人の部屋の清掃」の仕事。確かに、原稿から少し離れて現場を体で感じるのも、今の自分の仕事っぽいと思いながら、早速兄に仕事の電話をしてみようと思い立つ。

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その次は、仲のいい編集者の取材アシスタントの仕事。
すでにそこの媒体との仕事はしないことに決めたのだが、「彼への個人的なお手伝い」ということで、現場に駆けつけることになった。
場所は池袋。とある閉店することになったバーの経緯を聞くという話だったが、実は出資者が数千万をだまし取られていた、というディープな話。とはいえ、糞味噌な最悪な状況でも、にゅいっと手を出して助け船を出してくれる人がいたり。人の縁とは不思議なものと思いつつ、人が想像力を放棄したときの暴力性を思いつつ、ひどくげんなりする。

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池袋からは実家の最寄までは一本なので、ついでに母親のところに顔を出す。
いとうせいこう氏の「想像ラジオ」の話から、死者への記憶、死んだ犬のこと、街の思い出、「そういえばあの家のばあさん、もう死んだっけ?」、「花屋の向かいの古い家、たぶん昔の女郎部屋みたいなところだったと思うんだよ」みたいな話を2時間ほどして、近くの居酒屋で食事をしたところで、知り合いの編集者から飲みの誘いが来たので、目白方面へタクシーで移動。

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ようやく自宅に着いたのは2時過ぎ。帰りのタクシーの運転手さんと話しているとき、相手が面影橋生まれということを知り、妙に感慨深い気持ちに。「早稲田に球場があったなんて、もう誰も知らないでしょうしねえ……」というひと言から、今はなきボロアパートがひしめいてた坂道の一画や、古い家の1階でひっそりとやっていた駄菓子屋のことを思い出し、そういえば、あの駄菓子屋で飼っていた黒い子犬の首輪は真っ赤だったなあと思い、生きながら今立っているこの地点から見ると、過去の風景はあまりにも鮮やかで、自分がどこにいるのかまるで見当がつかなくなってくる。

…とりいそぎ、飲み過ぎには注意しようと思う、今日この頃。

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