引き返せないこと

どうしようもないことに直面した時、なんでこんなことが起こったのかを考えようと、思い出せる場面を1シーンごと振り返り、点検するのだけれど、結果的に行き着くところは数十年前の記憶に絡まり、さらにその記憶も実はもっと過去に繋がっていて、当事者が生まれた瞬間にまで遡らざるを得なくなる。
その上で、「じゃあ、自分は何をすればよかったのか」と改めて自問自答するものの、今度はこわばっていた体も、考え方も、急にゆるんでしまって、「どの時、どの場所で、彼に対して何をしようが、何も変わっていなかったのではないか」という思いから出られなくなる。

こうなること——つまり、引き返せないということは、これまでの関係の中でも想像していたことで、それゆえ、今ここで繋がりが切り離されても納得がいくように常に心構えをしていたつもりだった。
でも今、こうやって関係性の終わりに直面すると、やっぱりどこまでいっても理解し合えなかったということだけが強調されて残り、果たして、自分は誰の目の前に立ち、話し、その都度混乱して、それでもつながりを整理しようとしていたのか、わからなくなってしまう。

人はこういう風に死ぬこともある、ということを身をもって教えてもらった。
誰が教えてくれたのかは、もはやまったく検討もつかないが。

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